よくわかる解説:そもそもドレンとは何?
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ドレンについて語るためには空気中の水分、水蒸気について知らなければなりません。
空気中には水分が含まれており、この水分が気体から液体に変化したものが、いわゆるドレンと呼ばれるものです。
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まず初めに用語について整理をしておきます。
絶対湿度=空気に含まれる水分量
飽和水蒸気量=ある温度下での、空気の水蒸気保有量の上限
露点温度=水蒸気が飽和状態に達する温度
相対湿度=飽和水蒸気量に対し現在含まれている水蒸気量の比率
天気予報等でよく耳にする本日の湿度はこの相対湿度を表しておりますので、温度が温かく湿度が低い日は水分が気体としてより多く存在できるので洗濯ものもよりよく乾くのです。
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ではなぜドレンが発生するのでしょうか? 空気は温度が高いほど水が気体として存在可能です。温度が低くなるほど空気は乾燥します。
ある温度下での水蒸気の保有量の上限を、「飽和水蒸気量」と呼びます。
飽和水蒸気量はいわゆる相対湿度が100%であることを示しており、この相対湿度100%となる温度を露点温度と呼びます。
相対湿度120%や150%といった過飽和状態では、空気中に含まれる水分は結露して液体となります。
水蒸気の飽和状態は温度低下と体積変化によって起こります。
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温度低下による水蒸気の飽和状態の身近な例を挙げます。
夏場冷蔵庫から冷たい缶ビールを取り出すとすぐに水滴がつきます。
車や家で冷房を効かせると窓ガラスが曇り、水滴がつきます。
これらの理由は共通で缶ビールに水滴がつくのも、窓ガラスが曇るのも、周辺の空気が缶や窓ガラスで冷やされることで空気中の水分が過飽和となって水滴がつくのです。
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では圧縮空気からはなぜドレンが出るのでしょうか?
コンプレッサーが空気を吸い込む際に一緒に大量の水蒸気も吸い込んでいるので、圧縮空気には多量の水分が含まれることになります。
コンプレッサーが空気を圧縮する時には断熱圧縮が発生するために空気の温度も上昇しますが、ここでも飽和した分はドレンとして出てきます。
また、温度上昇した空気は、エアタンクや配管等で冷やされていく過程で、各所で結露しドレンとして出てくるのです。
つまり、圧縮空気中の水分は空気が圧縮される際の体積変化による飽和と、配管途中の温度低下による飽和の2つによって液化しドレンとなるのです。
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これら各所から排出されるドレンに含まれる不純物には油が混入します。
油冷式コンプレッサーは、油によって潤滑・シール・冷却を行い、効率をUPしています。
ここで消費される油は機種・世代によって大きく変わってきます。
レシプロ機の場合1m3あたり0.06cc
旧世代スクリュー機は1m3あたり0.02~0.04cc
新世代スクリュー機は1m3あたり0.002~0.005cc
オイルフリー機の場合は油を消費してないため含まれません。
ここで消費した油が水と混じり、ドレンとなるのです。
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油冷式コンプレッサーのエアー配管の各所から排出されるドレンに含まれる不純物には油が混入します。
排出されたドレンを集めてみますといくつかの形態に分かれます。
すぐに比重分離して浮き上がる浮上油。
時間を置いて徐々に浮上する分散油。
そして油と混じり合って乳化したいわゆるエマルジョン水です。
量としてはほとんどを占めるエマルジョン水ですが、エマルジョン化したドレンは長時間放置しても自然分離することがないため、油水分離させるためには専用の装置が必要になります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
株式会社フクハラ 営業課
コンプレッサーからどのくらいのドレンが発生するのか?
夏場37kwのコンプレッサーを動かした場合、どのくらいのドレンが出るのか計算してみます。
計算式:
(コンプレッサーで作られた圧縮空気に含まれる水分量)-(圧力下ドライヤー出口における圧縮空気中水分量)
37kWコンプレッサーから出る1時間当りのドレン量(圧力0.7MPa, 気温30℃の場合)
■ コンプレッサーで作られた圧縮空気に含まれる水分量
■ 冷凍式ドライヤーで作られた圧縮空気に含まれる水分量
1時間当たりのドレン発生量 合計 8.9L/時 - 0.5L/時 = 8.4L/時
エアーコンプレッサーのドレン発生量(L/h)
kW数 | ドレン量 |
---|---|
0.2 | 0.03 |
0.4 | 0.07 |
0.75 | 0.12 |
1.5 | 0.25 |
2.2 | 0.36 |
3.7 | 0.61 |
5.5 | 0.91 |
kW数 | ドレン量 |
---|---|
7.5 | 1.2 |
11 | 1.8 |
15 | 2.5 |
22 | 5.0 |
30 | 7.1 |
37 | 8.4 |
45 | 9.1 |
kW数 | ドレン量 |
---|---|
55 | 12.5 |
75 | 17.0 |
110 | 22.3 |
125 | 27.9 |
150 | 33.5 |
225 | 50.2 |
300 | 66.9 |
kW数 | ドレン量 |
---|---|
400 | 89.2 |
500 | 111.5 |
600 | 133.8 |
700 | 156.1 |
800 | 178.4 |
900 | 200.7 |
1000 | 223.0 |
条件:吸入空気温度30℃、圧縮空気温度10℃、吸入空気温度80%、圧縮空気圧力0.7MPa、正味1時間運転
上記の表を夏場の量とすると、春・秋は約2/5、冬は約1/5ぐらいの量になり、年間平均は夏場の約1/2となります。
ドレン形態・油分量
コンプレッサードレンは非常に不純物の多いものですが、特に問題になるのはやはり油分です。ドレンに混入している油分の組織は、浮上油・分散油・乳化水(エマルジョン)の3種類に分類できます。
浮上油は油そのもののことで水との比重差ですぐに浮き上がり、分散油もある程度の時間が経過すれば比重分離して浮き上がります。しかしエマルジョンは普段は混じり合うことのない水と油が粒子レベルで強固に結合しており、たとえ長時間放置したとしても自然分離することはありません。分離させるためには何らかの化学的処置が必要となってきます。
なおドレン中に含まれる油分量は、圧縮機の油消費量によって大きく差が出てきます。
現行の新型圧縮機はオイルセパレーターエレメントの質が向上したこともあり、その吐出し空気に含まれる油量は約0.002g/m3となっています。(メーカーによって若干の違いはあります。)
これが旧型スクリュー機では約0.02~0.04g/m3と現行機より10~20倍も多く、レシプロ機ではさらにその油量は増加します。
参考として、吐出し空気に含まれる油がすべてドレンとして排出された場合の数値を計算してみます。
なお、ドレン量の計算値、圧縮機の条件は「コンプレッサーからどのくらいのドレンが発生するのか?」と同じものを使用します。
■コンプレッサーから発生する年間平均ドレン量
※8.4L/時は夏場のドレン量です。年間平均を計算するためドレン係数50%を掛けます。
■コンプレッサーで作られた圧縮空気に含まれる油分量
■コンプレッサーから出るドレン平均油分濃度
※ドレン水油分濃度は、油混入率を100%として計算しています。
比重分離による前処理や、エアーに含まれたままドレンに油が混入しないこともあるため、実際の混入率は変化します。